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退魔巫女、淫夜に沈む

 その夜は濡れ雑巾が張り付いたような、湿気っぽい熱帯の夜だった。 深夜の公園。騒がしい虫の鳴き声に交じって、調子はずれの鼻歌が聞こえてくる。 中年の男が上機嫌で草むらで小用をたしていた。 じょぼじょぼと木の根元に小便をふりかけ、何度か体をゆすって汁切りをした後、しなびた一物をしまおうとした。 がさり。 奥の草むらで物音がした。 男は酒に焼けた顔を、怪訝そうにそちらへと向けた。 風に乗って、かすかな...

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退魔巫女、堕つ

草木も眠る丑三つ時、静寂に満ちた神社の境内で人知れぬ戦いが終わろうとしていた。石畳を挟んで、身の半分を失った異形……鬼。それに相対する巫女は、片膝をついていた。 「ぐぐぐ、さすがは退魔巫女よの……この儂を此処まで追い詰めるとは」「くっ……一歩、及ばずか」「誇っても良いぞ、人間……貴様は儂に立ち向かったものの中で、最上の術者よ」半身を失ってなお壮健な鬼の声色が優しげなものに変わる。だが、それは悪意に満ち...

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ママには内緒

窓から差し込む赤い斜陽が、廊下に落ちた影をどこまでも長く伸ばす。夏特有の生ぬるいゼリーの中を泳ぐような空気の中を、バスケ部のユニフォームの少女、綾坂琴音は急いでいた。一歩を踏み出すたびに、まだ幼さを存分に残す体つきに不似合いな豊かに実った乳房が揺れる。それを両腕で掻き抱くようにして押さえながら、 人気のない廊下にぱたぱたと靴の音を響かせた。急ブレーキ。琴音が止まったのは、女子トイレの前だった。音を...

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汚された純粋

某小学校、校長室。机の上に広げられた写真、それは一人の少女のものだった。結城美由(ゆうき みゆ)。肩までのサラサラの黒髪と、くりっとした大きな目をした可憐な少女だ。「……君に決めたよ」でっぷりと太った壮年の男が笑い、机の引き出しを開いた。入っていたのは、黒いビンだった。それには何もラベルは張られていない。それを大事そうに取り出すと机の上に置く。男は背筋を伸ばし、意を決して瓶を一気にあおった。飲み終え...

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歪な結合1

遠く、放課後の、生徒の帰宅を促す放送が流れている。僕は、声をかけようとして、思いとどまった。屋上に続く踊り場で、二人の女子生徒が向かい合っている。一人は僕が探していた、幼馴染の宮坂かえで(みやさか かえで)。ぴょこぴょこと跳ねるポニーテールが印象的な、良くも悪くも活動的な少女である。対して、もう一人は。見覚えはあったのだが、僕はすぐに思い出せず、目をこする。……思い出した。一年の時、図書委員会で会っ...

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